CHAPTER.1

アブない右翼を名乗っちまえ!

店名に使っている“JINGO”とは、英語で強硬論的愛国主義者という意味で、平たくいえば最終手段=暴力をも辞さない愛国主義者という意味だ。

愛国主義と暴力が結びつくことに不安を抱く人は多いだろう。特に日本では半世紀前に参加した戦争こそがそれであったとされ、広島、長崎の悲劇を招いた原因もそれだといわれている。また『日本人はアジア諸国に顔向けできない』という人の語る理由も、決まって愛国主義の暴走だ。

だけどぼくはあえてそんなアブない言葉を選んだ。理由はふたつある。ひとつは“愛国”という言葉への日本人の異常な反応に対し、一石を投じたかったからだ。

ぼくたちがTシャツを作り始めた6年前は、まだまだ愛国心をうたうことはタブーだった。会話の最中に愛国心なんて言葉を使えばいぶかしがられ、『もしかして右翼?』なんて聞かれることも珍しくなかった。その点は今でもそんなに変わっているようには思えない。

そもそも愛国心とは世界中の人々に共通する、自分の生まれ育った風土や文化、歴史や血縁、恋人や友人、そして自分やその子供達の未来に対する希望と愛情のことだ。世界中どこの国だって人々は愛国心を持ち、それが生活の精神的な基盤になっている。

それが日本では『もしかして右翼?』だ。バカバカしいにもほどがある。ならばいっそのこと“アブない右翼”を名乗っちまえ!と思った。

 

そしてもうひとつの理由は、人生は常に命がけでなくてはならないと思っているからだ。

生きることは決して楽なことじゃない。腹が減ればメシの心配をしなくちゃならないし、眠くなれば寝る場所の心配もしなきゃいけない。ストリートでは常にいい女、あるいはいい男の奪いあいだし、自分のつきたい仕事につくことだって同じ夢を持ったやつらとの闘いだ。欲しいものがあるなら全力で向かって行かなきゃ手に入らない。 ラクして幸福が手に入るなら誰もがもっと満たされているし、世の中はもっとハッピーになっているはずだろう。

また 平和平和といわれてはいるが、社会では毎日のように殺人や傷害事件が後をたたない。婦女暴行、いじめによる自殺、さらに弱いものへのいじめ、ウソや欺瞞、自分の得だけを考えた策略。善良な人間にとって社会は理不尽なことばかりじゃないか。

しかしそれが現実なんだ。自分の目の前で愛するもの・・・例えば恋人や家族が暴行されかけているときに、『レイプ反対!暴力反対!』なんて叫んだって、悪者には何の効き目もない。そんな感性で生きられる程世の中は平和だとは思えないよ。誰だって愛するものを守るためなら自分の身に危険を感じても戦うはずだ。そしてそれこそが真の人間の姿だとぼくは思う。

暴力をも辞さないというギリギリの覚悟が重要なんだ。暴力をすすめているわけじゃない。ただケンカはよくないだとか暴力はいけないだとか、そんな価値観に振り回されて腰抜けになり、心の中の握りこぶしを引っ込めるのは過ちだといいたいんだ。本当に欲しいものをごまかしてきたからこそみんな本当に大事なものを見失い、あきらめきった世の中になったんだ。そんな時代から抜け出すためにも、自分の心の中にある事なかれ主義を蹴飛ばせといってるんだ。

ぼくはJINGOという表記の他に“神護”という漢字も使っている。これは音にあわせた当て字であり、英語表記と合わせて思いついたものだ。だが実際には使うことになるのは、自分自身の暴力的衝動がきっかけだった。

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